不正行為の種類はさまざまですが、社内で行われたものは他の従業員や会社そのものに被害を与える可能性があります。
被る損害を考慮すると不正調査はぜひとも実施すべきですが、どう行動していいか分からない企業もあるのではないでしょうか?
今回は以下の要素を解説するので、ぜひ参考にしてください。
- 不正行為に該当する事例
- 不正調査の方法や注意点
- 再発防止への施策
不正調査の目的
不正調査は以下の目的で実施されます。
- 犯人を特定して罰したり、問題を解決したりするため
- 再発防止に努めるため
- 顧客や取引先に事情を説明したり、信頼を回復したりするため
不正行為というと、ニュースで扱われるような大企業の不祥事が思い浮かぶかもしれませんが、中小企業にとっても決して他人事ではありません。
その範囲は不正取引のような重篤なものから、サボりのような軽微なものまで当てはまります。
不正を看過すると自社が損害を受けるだけでなく、取引先や顧客にも被害が及びかねないため、すみやかに対処しましょう。
不正行為の代表的な手口
不正行為にあたる事例には以下があります。
該当行為が行われている恐れがあるなら決して放置せず、被害が広がる前に調査しましょう。
横領・着服
企業の資金や資産を、従業員が私的な目的で利用することを指します。
状況によってはキックバックなど、何らかの配慮の見返りとして取引先から金銭を授受する行為も該当します。
情報漏洩
企業秘密など社内の情報を流出させるスパイ行為や、自社や取引先の情報を利用してインサイダー取引を行うのも不正行為です。
とくに後者は法律違反なので、懲役や罰金が科される可能性があります。
データ改ざん・虚偽の報告
業績や財務データを隠蔽したり、改竄したりなどが代表的な事例ですが、虚偽の勤怠状況を報告するなど軽微なものもあります。
会計の偽装は最悪だと自社や取引先の倒産も招く可能性もあります。
各種ハラスメント
各種ハラスメントに対する世間の目は年々厳しくなっており、社内の問題で終わるとは限りません。
悪評が広まった場合、採用活動や株価にも影響を与えかねません。
サボり
サボりは求められる成果を出していれば多めに見るべきという意見もあります。
しかし特定の人間が怠けている状況は現場全体の士気に悪影響なので対処が必要です。
反社会勢力との交際
従業員が反社会勢力との交際をしていると犯罪に巻き込まれる危険性や、社会的信用を失う可能性があります。
場合によっては、行政からの指導・罰則を受けたり、金融機関からの融資が停止することも。
従業員による引き抜き
個々人の職業選択の自由は保証されていますが、基本的に在職中の人間が周囲を巻き込んで転職する行為は雇用契約上の誠実義務に違反しています。
人材の流出はもちろん、従業員の持っていた顧客も失う可能性があるため看過してはいけません。
社内不正調査の内容や注意点
ここでは不正行為に対して企業側がとるべき行動と注意点を解説します。
事実確認
内部監査や告発など、不正発覚に至るパターンは複数ありますが、いずれの場合も「不正が実際に行われたか」の事実確認は必須です。
まずは告発者本人や関係者にヒアリングしたり、客観的な証拠やデータを確認しましょう。
とくに電子データや履歴類など消去されやすい情報は優先的に保全してください。
また犯人による証拠の隠蔽や関係者同士の口裏合わせを防止するために、初動調査では秘密裏の行動が重要となります。
不正の告発は、行った本人が特定されてハラスメントに発展したり、孤立したりなど不利益を被る可能性を孕んでいます。組織の自浄作用を保ち、不正を早期発見できる環境を守るためにも告発者の保護を心掛けてください。
ステークホルダーへの情報公開
不正の内容によっては、調査中でもステークホルダーへ情報を公開した方が得策かもしれません。
なぜなら被害が発生してもなお情報が秘匿されていると、会社への不信感を抱かせるだけでなく、事態が拡大する恐れがあるからです。
情報の公開を適切にコントロールすることはステークホルダーへの被害を抑えるだけでなく、その後の企業活動への信頼性を確保するために必要な行動です。
情報公開の方法については様々な要素を考慮する必要がありますが、主なポイントは以下の通り。
不正の内容に合わせたタイミングで公表する
「不正の有無が確認できた段階」、「調査の途中」、「全て解決してからか」など情報を公開するタイミングは不正の影響度や内容によります。
とくに一般消費者に被害が及ぶような不正や、営業の許認可に関係する不正は、監督官庁へ迅速に通達しましょう。
情報に確実性を得てから公開する
一般消費者をはじめ、企業外に被害が発生する恐れがある場合は情報公開を急ぎたくなるでしょう。
しかし事実確認も済んでいない不確実な情報はいたずらに騒ぎを大きくするだけです。
部分的に開示する
ステークホルダーを安心させ、信頼を取り戻すためには必ずしも調査内容の全てを開示する必要はありません。
求められない限りは相手側にとって有益と思われる情報だけを公開すれば十分です。
対応策を伝える
不正の内容以外にも、「賠償する」「商品の交換をする」などおおまかでもいいので対応策も合わせて公開することで会社への信頼感を回復させられます。
とくに被害が発生して社外にも不正が周知されてしまった後は、より誠実な対応を意識してください。
問題に合わせた調査班を組織する
調査班の種類は主に以下の3つに分けられます。
不正の規模や、調査の中立性などの問題を考慮して決定しましょう。
社内調査
社内の人物なら会社の実情や業務に関する理解があるため、比較的スピーディーですが、判断の中立性は社内の利害関係に引きずられる恐れがあります。
リスクを避けたいなら当該部署とは別の部署から調査員を選ぶ選択肢もとれます。
内部調査委員会
経営陣や監査部門などを中心に据えつつ、弁護士など外部の専門家を招聘して行う調査です。
法律知識など専門性が求められる問題に対処しやすいですが、中心となるのが社内の人間である関係上、やはり中立性の確保は難しいです。
第三者委員会
会社と利害関係にない外部の人間のみで構成された委員会であり、調査の中立・公平性に高い期待が持てます。
社会的信頼が重視されるような、大企業の不正でよく用いられます。
調査
事前確認が済んだら、いよいよ証拠取得のための調査段階へと入っていきます。
事前確認に引き続きなるべく迅速に調査するのが、犯人による証拠隠滅を防ぐうえでも、被害を最小限に抑えるうえでも有益です。
主に調査される内容は以下の通りです。
関係書類の分析
各種検査記録や帳簿、会議録など書面で保存されている資料をチェックします。
社外の人間が参加する場合は、就業規則やマニュアル類も確認します。
現場確認
実際に現場におもむき、不正行為がどのようなシチュエーションで行われたか確認します。
外部の人間はもちろん、同じ企業内でも当該部署と関わりのない人物が調査する際も行われます。
データ類(フォレンジック調査)
各種電子機器や記録媒体のデータを調査します。
もし証拠となるデータが消去・上書きされてしまっても、フォレンジック調査を依頼すれば解決可能です。
ヒアリング
証拠の収集と並行して、関係者へのヒアリングも行っていきましょう。
事実確認と同様、対象者や順番も不正に関わっている(と思われる)人物との関係性に基づいて選定します。
なるべく中立性を期待できる人物から開始し、徐々に当該人物の上司や部下など利害関係者へと進め、最後に調査対象者に行います。
ヒアリングの主なテクニックとして以下も参考にしましょう。
- 不正調査であることを隠し、業務改善などポジティブな目的を装うこと
- 疑わしい人物には、取得した物的証拠を提示しつつ確実な証言を引き出す
- 特定の部署だけに行うと警戒心を呼び起こすので、関係のない部署にも同様のヒアリングを行う
- 直接個人にヒアリングせず、アンケート形式で行う
ホットラインの設置
既に不正が周知されている場合は、網羅的な情報提供を受けるためにホットラインを設置する手もあります。
この手法は類似の不正についてもまとめて調査できるメリットがあります。
不正の再発防止に向けて
再発防止の施策を検討する場合、ぜひとも頭に入れておいてほしいのが「不正のトライアングル」です。
不正のトライアングルとは人が不正を行う理由をモデル化したもので、「動機」・「機会」・「正当化」の3つの要素から構成されています。
下記の要素を十分に理解して、会社から不正の原因を根絶しましょう。
動機
「借金がある」「課されたノルマがきつい」などストレス下にある人物は不正行為をはたらく危険があります。
業務に由来する動機は従業員の負担を考慮し、労働環境に対する満足度を挙げることで対処可能です。
また私的・人格的な動機も、コミュニケーションが円滑で相談しやすい労働環境を意識すればある程度までは抑制できます。
機会
監視や統制の不備など、不正を行ってもバレにくい環境は人を不正行為に走らせます。
性善説に立つのもいいですが、監視体制の構築や、通報窓口の設置などの対策は必要です。
また業務工程を分割することで、業務の属人化を防ぎ、相互にチェックする体制を用意できます。
正当化
「最近忙しかったから、少しくらいサボってもいいだろう」など、都合のいい理屈で自己を正当化する心理は、ルール逸脱を誘発します。
主な対応としては、指導や育成の仕組みを確立させ、社内のコンプライアンス意識を高めることです。
従業員に対して業務へのフィードバックを定期的に行い、正しい職業倫理を獲得させましょう。
社内不正調査を依頼する場合
不正調査には専門知識はもちろん、調査にあたる人員や時間などのリソースが必要です。
しかし十分なチェック体制や監査部門を備えた会社は多くはなく、有事の際の対応に苦慮する可能性があります。
その場合は、探偵や調査会社などの専門家に調査を依頼する選択肢もあります。
専門業者はプロとしての高い調査能力以外にも、以下のような特徴もあります。
メリット | ・希望する時間帯に調査できる ・社外の人間が行うので調査がバレにくい ・顧客としての覆面調査や、従業員としての潜入調査を行っている業者もある ・調査に必要な機材や専用ツールを用意しており、法的能力の高い証拠を集めやすい ・弁護士の紹介など、調査後の対応まで相談に乗ってくれる業者もある |
デメリット | ・決して安くない費用がかかる ・業者によって専門性が異なるので、調査内容に合わせた依頼先を見つける必要がある |
不正調査は企業にとって醜聞につながるため、可能な限り社内で完結したいのが本音でしょう。
しかし問題解決は迅速に行わないと取り返しがつかなくなる可能性もあります。
よりスピーディーに問題を解決するために、プロへの依頼も検討してみましょう。
まとめ
不正行為は未然に防ぐのが理想ですが、実際に起きてしまった場合はなるべく早く解決して、会社やステークホルダーを不利益から守る必要があります。
しかし、限られた人的リソースで運営している組織ではなかなか調査を実施するのは難しいかもしれません。
その場合は専門業者への依頼も検討してみましょう。
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