業務上横領の証拠の集め方は?事情聴取のやり方も解説!

横領は会社に多大な損害を与えかねないので、もし起きてしまった場合は冷静に対処しなければなりません。

横領への対処法は複数ありますが、いずれの措置でも証拠を集めて事情聴取を行う流れは共通しています。

今回は以下の要素を解説するので、ぜひ参考にしてください。

  • 証拠の集め方や注意点
  • 事情聴取のやり方
  • 横領への対処法と未然に防ぐポイント

業務上横領とは?

業務上横領とは刑法253条に規定があり、「業務上自己の占有する他人の物を、不法に自分の物にする」ことを指します。

業務上横領は刑事事件となった場合、「罰金刑なしで10年以下の懲役」の量刑が設定され重い罪です。

対して「自己が占有していない物を自分の物にする」行為は、窃盗罪に当たります。

主な例としては以下の通り.

  • 経費を指定された目的に使わず、私的な目的に流用した。
  • レジなどの会計金を抜き取る。
  • 顧客から受け取った代金を未収金と報告して、自己のものにする。
  • 会社の口座から、引き落とした金を私費として使う。
  • 利益を少なく申告して差額分を自身のものにする。
  • 取引先への支払金を多めに申告して、相手先からキックバックを受け取る。
  • 管理している備品を私物化したり、転売したりする。

被害額が小さいから、確証がとれないからと放置すれば、自社や取引先、顧客にも被害が及ぶ可能性があります。

帳簿や備品に少しでも違和感がある場合、取り返しがつかなくなる前に調査しましょう。

横領の立証には証拠が重要

横領の調査にあたり、証拠の獲得は最優先事項です。

なぜなら決定的な証拠がないと事情聴取でも犯人は自白せず、以下のような事態に陥る危険性があるからです。

  • 被害額の弁償を請求できない
  • 解雇など懲戒処分も無効になる
  • 刑事告訴が受理されない、あるいは裁判をしても敗訴する
  • 逆に会社側が名誉棄損や不当解雇で訴えられる

十分な証拠があれば、自白を引き出せる可能性は飛躍的に向上し、万一否定を続けても、裁判で有利な判決を獲得しやすいです。

横領の証拠を集める

証拠は具体的な物品である「客観的」なものと、個々人の記憶に基づく「主観的」なものの2種類に分けられます。

ひとつひとつは頼りなくても相互に補い合って効力が高まるので、少しでも多く集めましょう。

客観的証拠【物的証拠】

2種類の証拠のうち、客観的証拠はより重要度が高いです。

いずれの証拠を集める際も「1.誰が 2.いつ 3.どこで 4.何を(どれくらい) 5.どのような方法で」といった要素が分かるものを優先してください。

上記がはっきりしていれば証拠の客観性が高くなり、事情聴取や裁判も有利な展開に持ち込めます。

証拠を集める際は、犯人による隠蔽を避けるためになるべく早く、秘密裏の行動を心掛けましょう。

犯人は「たまたま備品や金銭を預かっていたのを忘れただけ」というように、行動に悪質性がない旨を主張する可能性があります。そのためあえて犯行を促すような状況を用意し、「常習性があるか」「持ち帰った備品を私的利用したか」などを確認する駆け引きも必要です。

履歴・データ類

メール、通話履歴、アクセス履歴、出金記録、機器の操作記録、電子機器やUSBメモリのデータなど

上記は犯人による隠蔽以外にも、時間の経過とともに上書きされて消えるものがあります。

横領を疑ったらすみやかに機器の使用を停止して証拠を保全しましょう。

もしバックアップも含めて消えてしまった場合でも、後述のフォレンジック調査を依頼すれば解決できるので諦めないでください。

ただしデータ類は元データとの同一性が保証できないものは証拠として認められない恐れがあるため、コピーではなく元ファイルを確保しましょう。

防犯カメラの映像

防犯カメラの映像も時間の経過で消失するので早めにチェックしましょう。

映像は犯行の具体的な状況を押さえるのに絶好の手段ですが、手元や顔などが不鮮明なことも多く、単体では証拠能力が認められない場合もあります。

書面類

領収書、契約書、発注書、請求書、伝票、帳簿など

書面は実物とweb上のものに分けられますが、改竄の可能性があるため極力原本を入手しましょう。

web上の書面なら、URLが分かるようにスクリーンショットで保存して、アクセス手段を確保してください。

紙の書面なら、筆跡や印鑑など個人を特定できる要素も忘れずにチェック。

ただし本人によるログインでしか取得できない情報は、調査が露見しないよう事情聴取まで後回しが無難です。

顧客から受け取った現金を着服しているなど社内に書面の控えがないケースでは、問題が発覚した際にすみやかに顧客に謝罪に行き、書面を回収しましょう。

会社の金銭、備品と証明できる情報

商品番号、製造番号、紙幣の記番号など

物品を特定できる情報を控えておけば、もし紛失した場合も犯行を特定しやすくなります。

疑わしいものがフリマなどで出品されていた場合は、あえて落札するのもアリでしょう。

現金に関しても、レジや金庫にある紙幣の記番号を控えておけば、従業員の許可をとって財布を確認する対応ができます。

主観的証拠【証言・アリバイ】

横領の全体像を明らかにするには、関係者へのヒアリングも不可欠です。

ヒアリングは関係者の記憶が曖昧になる前の方が効果的なので、迅速に行動したいところですが注意点もあります。

まだ横領が周知される以前に行うと調査が露見し、犯人が証拠隠滅に走る可能性があります。

そのためヒアリングを行う際は、最初のうちは信頼できる人間に限定して行うか、ある程度証拠を集めてからが良いでしょう。

事情聴取のコツ

集めた証拠から犯人と犯行内容が絞れたら、仕上げとして事情聴取で自白を引き出しましょう。

犯人に対しどのような態度で臨むにしろ、明確な自白があればその後の対応はかなりスムーズになります。

ここでは事情聴取を行う際のポイントを紹介します。

支払誓約書(債務契約書)を用意する

法的に有効な自白とは「犯行の日時、場所、金額(物品)、方法、動機」など詳細かつ具体的でなければなりません。

犯人に確認させるためにも、被害額の弁償を求める支払誓約書にはあらかじめ上記の要項を記載しましょう。(あるいは本文も含め、当人に直接記載させるのもアリです)

また自白をとる段階では、支払方法や期限などの条件はあまり重視しないほうがいいでしょう。

相手の経済状況を考慮せずに条件を設定すると、相手も同意しづらくなるからです。

「弁済すれば刑事告訴しない」「被害額の一部だけ弁償すれば良い」「弁償は一括ではなく、長期分割にする」など、同意への心理的ハードルを下げるのが大事です。

議事録を作る

事情聴取の際は、議事録も作成しておきましょう。

議事録は単なる忘備録ではなく、証拠能力が認められる場合もあるからです。

ただし会社が一方的に作成したものは客観性が低いので、自白の有無に関わらず、内容を確認してもらって署名をもらいましょう。

聞き逃しや間違いがないように録音したり、複数人でメモをとったりしながら作成するのが理想です。

過度なプレッシャーを与えない

事情聴取では相手にプレッシャーを与えすぎないでください。

相手を追い詰め過ぎると、自白を強要されたとして最悪会社が訴えられます。

相手を疑っていても、あくまで表面上は平静を装いじっくり話を聞く姿勢が大事です。

また小さい嘘に毎回反論すると、その度に別の言い訳を主張し、堂々巡りになるかもしれません。

言い逃れできないように、相手の主張を積み重なったところで、証拠をもとに一気に矛盾をつきましょう。

そのためにはあらゆる嘘や言い訳に反論できるように証拠を精査しておきましょう。

自白は必ず署名で残す

議事録を作成している場合でも、自白は必ず署名の形で受け取りましょう。

署名の形で残しておけば、言った言わないの議論や発言の撤回も防止できます。

もし相手が自白しなくても、言い分を記した「弁明書」や前述の議事録への署名で対応可能です。

弁明書があれば、後から証拠と照らし合わせて矛盾点を指摘できます。

横領に対する処分

横領に対する処分を紹介します。

いずれの手段も法律の専門知識が必要なので、弁護士に相談しながら進めましょう。

損害賠償請求

損害賠償請求を行う際のポイントは、相手の支払い能力を見極めて適切な返済方法を選択することです。

なぜなら横領金は使い込まれている場合が多く、一括での返済が困難なことが多いからです。

返済方法としては、分割払いや身元保証人への請求のほか、仮差押えなど法的手続きも検討できます。

懲戒処分

自白を得られても、解雇など懲戒処分の正当性が認められるとは限りません。

懲戒処分はあくまで、就業規則や雇用契約書で定められた範囲でしか実施できず、不相当に重い処分は無効となります。

後から不当処分と訴えられないように、犯行の性質・反省の有無・会社への影響度など慎重に考慮しましょう。

刑事告訴

悪質性が認められるなら、刑事告訴も視野に入れましょう。

刑事告訴は社内外に横領の事実が広まる恐れがありますが、社内のけじめをつけ、節度を保つ効果が期待できます。

また刑事処分を希望しない場合でも、告訴をちらつかせることでこちらの主張を飲ませるテクニックもあります。

横領を未然に防ぐには

損害やその後の対処にかかるコストを考慮すると、横領は未然に防ぐに越したことはありません。

横領を防止する手段の例として以下があります。

  • 売上金は毎日入金する。
  • 帳簿、通帳、物品数は定期的に確認する。
  • 商品や備品の購入者と管理者は別にする。
  • 経理業務を複数人に分割し、相互に確認し合う。
  • 監視カメラを設置する。

横領の責任はもちろん当人に帰されますが、不正に手を染めさせない環境を整えることも会社の義務です。

社内調査が難しいなら専門業者に依頼しよう

横領の調査をしたいと思っても、さまざまな事情から実施が難しい会社もあるかもしれません。

その場合は探偵や専門機関の利用も視野に入れてはいかがでしょうか?

費用はかかりますが、下記のように多くのメリットがあるのでぜひ検討してください。

調査がバレにくい

尾行や監視による調査が必要な場合、社内の人間が行うと身バレの危険性があります。

調査が露見すると、犯人の警戒心を招く以外にも、社内に悪い噂が蔓延する可能性があります。

しかし専門業者なら第三者が調査するので、身バレのリスクを抑えられます。

業者によっては顧客を装っての覆面調査や、従業員に成りすます潜入調査も依頼できます。

希望の時間帯に調査できる

社内調査は、人員などのリソース的な観点から困難な可能性もあります。

しかし専門業者なら、業務時間外を含めた希望する時間帯に好きなだけ調査できます。

ただし当然ながら調査員の拘束時間が長いほど依頼料は高額です。

費用を安く抑えるためにも、調査対象者の行動パターンや怪しい時間帯など、業者側のリソースを減らすための情報は積極的に提供しましょう。

調査力がある

社内調査はやはり技術・機材的な観点からとれる選択肢に限界があります。

身バレの危険性はもちろん、時間だけがかかることで被害が拡大するかもしれません。

専門業者は高い調査力と豊富な機材を揃えているので、希望する情報を迅速に取得できます。

とくに電子機器に含まれるデータを復元・解析するフォレンジック調査は、専門業者以外での実施は困難です。

証拠能力が高い

第三者である専門業者が収集した証拠なら、客観性が認められやすいです。

とくに写真はある程度鮮明で周囲の状況が判明しているものを複数枚揃えなければ、十分な法的効力を発揮しません。

専門業者は暗視・望遠・小型カメラなどを状況に合わせて使い分けて取得可能です。

まとめ

横領に限らず社内における不正行為には、感情的な対処をしたくなるかもしれません。

しかし勢いに任せた調査は、犯人に警戒心を抱かせるだけでなく、冤罪の危険性を孕んでいます。

会社を守るためにも、まずは冷静に証拠集めから始めましょう。

アルタ素行調査は企業調査に豊富な実績があり、調査終了後に無料で弁護士紹介も行っています。

無料相談にも対応しておりますので、社内の不正行為に悩んでいるなら気軽にご連絡ください。